伝世と発掘
過日、ご自宅でのお食事会に誘われた。
「何で俺が?」というのが正直なところだった。
来春にリンクする予定はある…が、親しい間柄ではない。
とにもかくにも嬉しかった事は確かだ。
仕事柄、大抵の事では臆さない。
けれども今回は緊張しまくりだった。
揃いも揃って数奇者ばかり…(ただ、敬愛する大兄が偶然この会に招かれていた。それが唯一の救い、だったかも)。…そんな数奇者達の中に、端然とされている方がおられた。
その方が、そう、日常の一コマのようにさり気なくバッグから出された二つのもの。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」…でしたよ。
とある夏の日。
一つはガラス仕切りの前で一時間惹き付けられていた、それそのもの。
もう一つはあり得ないぐらいに酷使されていながらも、凛とした強さをもつもの。
ひれ伏すしか無かった。
伝世のもつ力は強い。
後者は斑。
碗形で前述の通り400年間、人の手を渡り形を今にとどめるモノ。
手に持つのは初めて、だった。
伝世ならではの滑らかさ。
オールド・リーヴァイス501XXのようなザリっとした厳しさ、そして使い込まれた優しさ。
そう、代え難き見込みの美しさ。
焼成は還元。
…が、釉薬は飛ばずに所謂まんだら、否、清流の青というべき窯変が見込み一面に。
当日私はようやく最近手元に来てくれた同型の発掘もんを携えていった。当然、吹き飛ばされました(伝世品しかない酒宴だったし)。ここまで味を出すには毎日呑んでも100年はかかるだろうなぁ。
★奥が、その凄まじき伝世斑碗形盃。
畏れ多くもこの盃で呑ませていただきました。
嬉しいやら、羨ましいやら、諦めやら…。
去来する様々な事。
発掘は発掘の良さがある。
が、やっぱり伝世には及ばないなぁ、
と言うか、ただただそのポテンシャルの高さを痛感。
一つ、二つ、いやいや数十も上のステージ。
だがこの酒宴で目が覚めた。
次に目指すところがぼんやり、と…。
Sさん、有り難うございました!