古唐津 岸岳庵

24時間古唐津数奇 feat. 初期伊万里・李朝・木地盆

銘 にぎり石

週末、M.K.さん宅へ。
本業のロケで氏のお茶室をお借りした。その写真をレイアウトしたCDサンプルをお届けに。
氏は数々の著作や媒体との仕事でクリエイティヴの何たるかを熟知されている。
そんな先輩に改めて今回の仕事をお褒めいただき、ホッと胸を撫で下ろした。

撮影時の話しに端を発し、ファッションのこと、高橋悟郎さん(ネイティヴ・アメリカン・アクセサリー・デザイナー)のことなどをつらつらと…。その後じっくりと氏所蔵の古唐津をお見せいただくことに。

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7、8年ぶりに拝見するもの、そして新たなもの…。
いずれも氏の好みを反映した好ましいものばかり。垂涎、とはまさにこのこと。




新たなものではなんといっても枇杷色伝世の筒が素晴らしかった。見込みは紡錘形で白く釉がたまり、
高台はきりっと優等生。細やかな土味やら竹の節というのも盃の格を高めている。松浦系だろうか?
手にした感じは重心が下方にあるため、グッと重く「これぞ唐津」な強さが琴線に触れる。
お酒も呑みやすそうで良い、良い。

そして筒向。
これも氏の著作にはちょくちょく顔を出しているもの。
土味やら高台周りが拙蔵の盃と酷似しており藤の川内産なのでは?と思わせる。
発掘ものだがゆがみ方やら手持ちやらが”へうげて”いてたまらない。
前述の伝世の筒は勿論素晴らしいが、僕にはこちらのほうがぐっ、と来る。

径8センチ弱の小皿。氏はこれでお酒を呑んでいるらしいw(→平戸北部系)。
上等な箱に納められ、氏の愛玩ぶりが伝わってくる。
ここまで小さな皿、ってのは初見だ。
高台は糸切りで三つの砂目。面白い事にこんなにも小さな皿であるのに見込みに目跡がある。
径10センチぐらいの皿の見込みにのせて焼かれ、更には盃を載せられて焼かれたのだろう。
そんなことを想うとたまらなく楽しくなってくる。

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最後にこれも著作で見かける片口、発掘伝世のようだ。
轆轤でスッ、と引き上げたまんまの口辺、見込みの表情がなんとも面白い。
容量1合2、3勺というところ?ベストな独酌サイズ。
良いなぁ、良いなぁ。








興が乗って来た。
楽しくて仕方が無い。
で、以前に氏に写真をお見せした時に興味をもっていただいた拙蔵の筒を取り出す。
直接見ていただきたかったので携えて来たのだ。
「焼きがかたいなぁ、カチンカチンだなぁ、石みたいだ」
「わかりやすい、良いもんだ」
と、気に入ってもらえたご様子。なので、おそるおそる箱書きを御願いする。
ご快諾!いただきあっという間にすらすらっ、と書いていただいた。
おまけにアドリブで銘も頂戴する。
「そう、この銘がすっ、と浮かんでね。持った感じが石なんだよ、これ」とおっしゃる氏。

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銘、にぎり石。







拙蔵の古陶で箱書きをいただいたのは今回が初めて。
「青唐津の筒盃」→「にぎり石」。
モノは変わらないが、僕のそれに対する気持ちは間違いなく深くなった。

数奇者達は愛蔵の品に銘をつけた。
なんとなく、そう、なんとなくではあるがその気持ちが今回の出来事を経て理解出来た。
良い経験、でした。

その後、二人で近くのお蕎麦屋さんへ。
氏は”にぎり石”で、僕は前述の発掘筒向をお借りし、昼酒に興じた。
あっという間に2合徳利をおかわり3回。
話しは多岐に渡り、最後は人生相談にw。
昼のお酒は本当に酔いますねぇ。
「至福」、この一言につきます。

ここのところ本業のストレスでちょいダウナーでしたがリセット出来ました。
骨董、というか古唐津というか…。「逃げ込める趣味の世界」がある、ってことは間違いなく
人生にプラスに働く、そう痛感した週末。M.K.さん、有り難うございました!