小皿のこと
週末、なかなか御逢い出来なかったA師匠宅に招かれた。
絶妙のタイミングで供されるお料理の数々は美味しく、素敵な宴だった。
お食事が一段落のタイミングで「たばこを吸います」という師の後に続き書斎へ。
国文学、古美術の書籍が美々しく収まった本棚。
そこかしこに「さり気なく」レイアウトされた仏教美術の品々。
(お住まいの立地、佇まい、ご家族、そしてこのお部屋…。羨ましい、その一言でした。)
一頻りの古陶話しの後に、酒器を御見せいただく。
手に取り、さすりながらそれらの器に関わるお話しをおききする。
中でも小振りの古唐津盃、三島や黒高麗の徳利…。
お酒も程よくまわり、気持ちの良い時間だった。
その後に持ち出された箱から発掘ものの古唐津のお皿5枚。
平戸系とおぼしきそれら。
伝世1枚と発掘伝世1枚、そして呼継ぎだらけのもの3枚が寄せられている。
その、伝世のお皿。
間違いない古唐津。
だが、典型的な「京唐津」を思わせる高台。
(見覚えがあるなぁ、と思っていたらとある雑誌で紹介されていたものだった。誌面でのレイアウトも良い感じだったので記憶に焼き付いていた。)
釉薬はさらっとかけられただけ。
土みせの多い、尻っ絡げ仕様。
高台は力強くムギっとした竹の節で、伝世らしく経年使用によりそこかしこが摩滅している。
その佇まいが良い。
見込みの目跡は四つの砂目。
土味は細やかで上品だ。
平戸系小溝上、山辺田産に同様なものが数多くみられるよう。この小皿の産は窯はそのあたりかな?
それにしてもなんだろう、この小皿の力強さ。11センチ弱なのに凄い存在感だ。
そんなこんなでこねくり回していたら「どうぞ、お持ちください」とのお言葉。
「!、えっ、今なんとおっしゃいました?」
…仰天でした。
恐縮して言葉を失っていると「どうぞ、どうぞ」の追い打ち。
その後、座に戻り更に呑み直した。
…が、衝撃ゆえか随分と過ごしたが全く酔えなかった。
結局、緊張しつつも小皿五枚、拙宅に来ていただく事に。
五枚それぞれ日々使い倒そうと思っている。
この”京唐津高台”仕様の小皿はそこそこ深さがあるので時折平盃として。
早速明日、杉箱を頼まねば。
師匠、有り難うございました。
大切に使います、愛でます!